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【共創事例】RYODEN様:最...

2026/8/27 00:00

【共創事例】RYODEN様:最新技術と実用の間にある「死の谷」に橋を架ける。フィジカルAIの共同技術検証と、製造現場への実装を見据えた取り組み

株式会社RYODEN様は、FA・デバイス・ビル設備・エネルギーなど幅広い領域を手がける技術商社です。近年は「事業創出会社」を掲げ、仕入れて販売するだけではなく、自社の技術で付加価値を加えて顧客へ提供する事業モデルへの転換を進めています。

同社の戦略技術センターでは、世界的に注目を集めるフィジカルAIにおいて、ロボット制御を大きく変える可能性を持つVLA(Vision-Language-Action Model)の技術検証を、Polaris.AIと共同で進めています。VLAは、視覚情報と言語による指示を基に、ロボットの動作を生成する技術です。研究・実証段階ではさまざまな成果が報告されている一方、産業ロボットを用いた量産現場での本格的な実用例は、現時点では限定的です。同社は、VLAの産業適用による、より柔軟な工場自動化の実現に向けて技術検証を進めています。

今回は、株式会社RYODEN 執行役員 戦略技術センター センター長の反田様、同センター 開発技術部長の徳田様、同センター 技術ソリューション部長の中尾様、同センター 開発技術部 先行開発グループの斎藤様にお話を伺いました。

<▲写真> 左上から:株式会社RYODEN 戦略技術センター 技術ソリューション部長 中尾様、同社 執行役員 戦略技術センター センター長 反田様、Polaris.AI株式会社 代表取締役CEO 徳永、同社 Account Executive 杉本

左下から:株式会社RYODEN 戦略技術センター 開発技術部 先行開発グループ 斎藤様、同社 戦略技術センター 開発技術部長 徳田様、Polaris.AI株式会社 Business Architect 冨樫

(所属、役職は取材当時のものとなります)

― 事業内容と、皆様の役割について教えてください。

反田様:RYODENはもともと商社で、現在は技術商社と称しています。これまでのように物を仕入れて卸すだけではなく、社内に蓄積されてきたナレッジやノウハウも活用し、FAソリューションや植物工場といった新しい領域にも挑戦しています。私たちは「事業創出会社」であることを宣言しています。

たとえばロボットであれば、仕入れてそのまま売るのではなく、AI、センサーなどの技術で付加価値をつける。技術で人とつなぐことを非常に重視しています。ロボット単体では得られない高い価値をお客様に提供しようという考え方です。

お客様からは、縦割りではなくトータルのソリューションを求められることが多い。そこで、これまで縦割りだった事業に技術で横串を通していく。その中心にいるのが戦略技術センターだとご理解いただければと思います。

徳田様:戦略技術センターの開発技術部長を務めています。部署としては、自社ソリューションの開発と展開、その基盤となるプラットフォームづくり、そして今回Polaris.AIさんと取り組んでいるような、今必要なものより少し先を見越して備えておくべき先端技術の調査・研究。この三つを全社の技術部隊としてのミッションとしています。

センター全体はおよそ60名で、大きく二つの部に分かれています。私の開発技術部はソフトウェア開発が中心、もう一方の技術ソリューション部はロボティクスや工場機器を扱う部隊です。今回のフィジカルAI/AIロボティクスは、まさにロボティクス×AIですから、両方が関わる領域です。
 
中尾様:戦略技術センター技術ソリューション部の部長を務めています。私たちの部隊はもともとFA事業部と密着したFAEの部隊で、三菱電機様の代理店としての技術サポートに加え、三菱電機様以外の商材であるパートナープロダクトのFAEの業務を行ってきました。現在はこれらに加え、自動化・デジタル化を中心としたパートナープロダクトの技術や、タッチパネルやIPC、OT領域のセキュリティにも取り組んでいます。
反田が申し上げた「技術で付加価値を上げる」ことを、お客様と密着しながら直接的に提供していく立場です。

斎藤様:徳田の下で、先端技術と新規事業を担当しています。テーマとしてはフィジカルAIやデータ活用ですね。実際にはラダーの延長にあたる制御まわりなども扱っています。

― フィジカルAIに取り組まれるまでの経緯を教えてください。

斎藤様:私がAIの勉強を始めたのが2019年ごろです。当社には監視カメラの事業があり、画像による転倒検知などに取り組んでいました。その後、生成AIが広がってきたタイミングでVLMに興味を持ち始めました。VLMで何ができるかを探っているうちに、フィジカルAIが出てきたという流れです。

画像検知系のディープラーニングがあり、そこにChatGPTで生成AIのモデルが出てきて、文章中心のLLMがVLMになっていく。その延長線上にフィジカルAIがありました。

徳田様:当社が生成AIへの本格的な取り組みを開始したのは2024年です。ChatGPTの登場を契機に、当社も研究機関・大学との三者連携によるプロジェクトを立ち上げました。2025年には、その成果として生成AIを活用した社内向けの実証ソリューションをリリースしています。

取り組みの開始当初から、LLM、VLM、VLAへと対象を広げる技術ロードマップを描いていました。当社は以前から画像認識AIに取り組んでおり、画像と言語を扱うVLMとの親和性が高いためです。その先にある、認識や判断をロボットの動作につなげるVLAへの展開も、自然な流れと捉えています。

<▲資料>RYODEN様が2024年に発表したロードマップ


まさに今、Polaris.AIさんと一緒に取り組んでいるのがその領域です。技術進歩が早く、VLAが想定より前倒しで来たという印象はありますが、計画の中で進められていると考えています。

実績で比べられない領域だからこそ、技術の土台を見た

― Polaris.AIとの接点と、選定の経緯を教えてください。

斎藤様:最初の接点は展示会でPolaris.AIさんのブースに伺ったことでした。会社を探す軸としては、やはり先端技術をやっていること。その中でも松尾研発のベンチャーというのは名前としてインパクトがあり、惹きつけられたポイントでした。

そもそも、当時のフィジカルAIに導入実績のある会社はありませんでした。技術そのものが立ち上がったばかりですから、実績を並べて比較するという選び方ができない領域でした。そのため、見るべきポイントは技術的な土台がどれだけしっかりしているか、そこに安心感を持てるかどうかだと考えました。

そういった意味で、まず松尾研発のベンチャーであることは分かりやすい点でした。加えて、CEOの徳永さんの経歴を伺うと、ロボットの研究室のご出身で、ロボット競技のコミュニティにも関わっている。技術者の方々もロボティクスの博士課程を出た方が中心でした。

そうしたバックグラウンドの強さを知って、これはいけるんじゃないかと思いました。安心感があった、というのが率直なところです。 

― 実際に進めてみて、印象はどうでしたか。

斎藤様:具体的に業務を進める中でも、エンジニアの方々の知見の深さを感じています。VLAの学習方法についていろいろ質問すると、こちらの相談内容や前提を踏まえたうえで、次にどうするかという選択肢を幅広く提示してくれる。また、フィジカルAIの取り組みとは別件で、社内で検討しているAIの学習方法に関連する質問をした際にも、的確な回答をいただけており、幅広い分野において専門知識があるからこその応答だと感じました。

将来の基盤への投資として。技術と実用の間にある「死の谷」に橋を架ける

― 前例のない領域への取り組みについて、社内ではどのように意思決定されたのでしょうか。

徳田様:技術部門には、まず事業に貢献することが求められます。そのため、投資においても、直近の事業成果につながる取り組みが優先されます。

一方で、将来の事業基盤となる技術への投資も欠かせません。当社では、そうした先行技術に取り組むための枠を設けており、その重点テーマの一つとしてフィジカルAIを選定しました。

フィジカルAIがすぐに事業化できるとは考えていません。しかし、中長期的に当社の事業へ与える影響を見据えれば、今から取り組むべき領域だと判断しています。

反田様:技術はどんどん進歩しています。ただ、その技術が本当に実用になる、お客様に「使いやすい」「便利になった」という価値を感じていただくところに行くまでには、昔から言われる「死の谷」があるわけです。

技術と社会実装の間に橋を架けるには、地道な作業が要ります。お客様のニーズをよく理解したうえで、現場の方の声を聞いて、「どんな困りごとがありますか」と。それならこちらの橋ではだめだ、こちらから架けなければ、と。そういうルートを泥臭く開拓していく必要がある。

その時にいろいろな道具や知識が要るわけですが、その道具、知識をうちは持っているなと思っています。FAやデバイスの事業側や顧客に接する営業が現場を知っていますから、こういうルートでなければだめだ、というのがある程度わかる。

技術開発側でも一緒にこの死の谷を埋めていってくれるだろうというパートナーを選んでいるわけです。Polaris.AIさんは、社会実装を見据えたフィジカルAIの技術水準が高い。だからパートナーになっていただいたのですが、RYODENは技術力だけでなく泥臭さも求めています。この当社の方針に巻き込まれてくださいという思いですし、実際に巻き込まれてくれるだろうと期待しています。

徳田様:AIの発展は進んでいますが、現場適用や、きちんとお客様に使われる形に持っていくフェーズには、まだ時間がかかりそうだという話を社内でもしています。そこの足元を固めないと進みません。そこを一緒にやっていただけるという理解です。

先が見えないテーマを、短い区切りで前に進める

― プロジェクトの進め方について、率直なご評価を伺えますか。

徳田様:非常に難しいテーマなので、明確に先が見えない状況だとは思います。それでも、次のステップや直近の短いタームで取り組むことを区切って進めてくださっているので、こちらとしてもとっかかりやすい。テーマが大きいので、「今どこにいるんだっけ」とならないようにハンドリングしていただけているのは非常に助かっています。

あわせて、評価した結果を成果物として継続的にまとめてくださっている点も大きいです。まだ基礎の段階ではありますが、失敗した結果も含めて、現実をそのまま伝えてくださる。それが非常に好感を持てますし、我々にとって今それが必要なフェーズなので、助かっています。

今後に期待したいこととしては、技術をどう事業・ビジネスに落とし込むか。そこが最大のテーマだと思いますので、着地点をどこに置くのかを常に一緒に考えながら、技術と隣り合わせで進めていきたいと考えています。

斎藤様:プロジェクトの最初のフェーズは技術調査が中心でした。ロボットのこれまでの経緯や、なぜ今フィジカルAIが取り上げられているのかをレポートとしてまとめていただき、そこからモデルのチューニングや技術検証に入っていきました。あの頃はこちらもまったくわからず、完全に任せきりだったので、誘導していただけたのは良かったと思います。

何より、フィジカルAIに対するモチベーションがあり、どんどんやっていこうという姿勢が会社としてあること。そこが一番だと思っています。

製造業は「動くもの」でできている。フィジカルAIの出番は広い

― 今後の展望を教えてください。

反田様:製造業をより良くする、効率的にする、価値を高める。それらを様々な形で提供するのが我々の生業だとすると、対象はものすごく広い。工場で動いている機械はいくらでもあり、どれだけ仕込んでどれだけアウトプットが出たのかというスループットまで含めて全体で考えると、見るべきことが非常に多いんです。

今連携テーマとして掲げているピッキングは、その広大な領域のごく一部です。ただ、まずはそういう練習問題的なところから始めないと具体的な学びが得られない。いきなり工場全体の最適化と言ってもできませんから、大きな青写真を頭に置きながら局所最適から取りかかるのは正しいと思います。成功してきたら、もっと広げていくべきです。

製造業というのは結局、動くもので構成されています。理想を言えば、工場を丸ごと見たときに、フィジカルAIが自律的に動かしている、コントロールしているという世界を作り出すことになります。技術を社会実装へ結び付けるうえで、フィジカルAIは製造業にとって間違いのない方向性なんです。

斎藤様:今後の方向性としては、導入SIerとしてのロボット・フィジカルAIの導入ですね。アーム系の導入から、その延長でのヒューマノイド系、さらに現場の制御系をフィジカルAIでまとめていくところ。もっと言うと、カタログの延長にあるオントロジー(※1)を3Dまで広げていく。広い意味での製造業現場のDXに、広く関わっていければ一番だと考えています。

直近の課題としては、技術者不足です。今後引き合いが増えたときに、人月での対応だけでは捌けません。どうパッケージ化し、その先どうソリューション化していくかは、先回りして考えておかなければならないと思っています。

(※1)用語や概念の意味と、それらの関係性(上位・下位、部品構成、属性など)を、コンピュータが解釈できる形で体系化したもの。

<▲写真>RYODEN様で実際に検証している機器

― 最後に、AI開発や活用に可能性を感じつつも一歩を踏み出せていない企業へ、メッセージをいただけますか。

斎藤様:今、AIの普及は縦方向と横方向に広がっていると思います。

縦方向はリテラシーです。高い人と低い人の差が非常に大きい。特にフィジカルAIは難しいので、その差が顕著に出ます。ですから、具体的な用途向けにどうするかを考えることと、一般の方々にどう普及させるかを考えること。対象のお客様が何に、どのレイヤーで困っているのかをよく考えて、レベルを合わせて提案することが大事だと思います。

横方向は領域の広がりです。例えばこれまでラダーだけをやってきました、ではなく、フィジカルAIもやる。ドメインはもちろん、いろいろなジャンルを扱っていかないと、AI時代には生き残れないと思います。

そのうえで、課題整理が大事だという点も挙げておきたいです。自分がどこで困っているのかを考える。現在位置を把握することからだと思います。

Polaris.AIより

日本ではまだ、AI領域で「これがないと業務が回らない」と言われるようなプロダクトやサービスが多くありません。一つでも現場に入り込み、時間をかけて作り込んでいくことが必要だと考えています。

AIの技術だけを理解していても、現場のドメイン知識がなければ実装には届きません。RYODEN様は現場との接点を数多くお持ちです。教えていただきながら、泥臭く現場に入り込んでいく。そうした形でご一緒させていただきたいと考えています。

反田様、徳田様、中尾様、斎藤様、貴重なお話をありがとうございました。

AI活用に関する相談はこちらから受け付けております。

 

株式会社RYODEN 様
本社所在地:〒102-0083 東京都千代田区麹町5-1 麹町弘済ビルディング
事業概要 : 三菱電機グループの技術商社(東証プライム上場)として、「FAシステム」「冷熱・ビルシステム」「エレクトロニクス」の3基幹事業に加え、スマートアグリ・ヘルスケアなどの新事業(X-Tech)を展開。ロボティクス、レーザー加工、空調ソリューション、半導体・電子部品、医療ITなど幅広い製品・サービスを提供。
設立年度 :1947年
企業サイト:https://www.ryoden.co.jp/

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